上海から武夷山へ:古茶道を旅する・その5

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    2017.06.26 桐木村、最後の朝

    山疲れで、ゆっくりめに起きる。
    住人たちも、朝からのんびり。階下でお茶の作業をする香りが二階にも充満している。

    朝ごはんを食べた後、杭州から来た2人と入れ替わりに来た新しい客・イン姐さんも一緒に、ヤンヤンのおじさんの家にお茶を飲みに行く。おじさんの家には、昨日山に行ったとき見かけた二匹の犬がいた。茶卓の並ぶ一階に通され、おじさんの淹れてくれる金骏眉をいただく。茶杯が素敵だったのと、今まで男性の茶藝を見たことがなかったので、新鮮に感じた。

    二軒目。ヤンヤンのお姉さんの家。お姉さんの娘・シャオユーが出迎えてくれる。ここでもおじさんがお茶を淹れてくれた。お茶を飲んでいる間にヤンヤンがシャオユーをからかい、それに気をとられる一同。

    ヤンヤンの家に戻ると、お茶の作業は「揉捻(Róuniǎn)」から「解块(Jiě kuài)」という段階に入っていた。機械と手作業でバラバラにした茶葉をカゴに入れる。中央に穴を開けるのは、発酵させるときに温度を均等にするためらしい。カゴの上から湿った布をかけ、室内で6-10時間発酵させる。

    penghuan(パンホァン)曰く、ヤンヤンの家は誠実な商売をしており、技術も高いので取引しているというので、技術が高いとはどういうことか聞いてみたら、ひとつひとつの動作ではなく、すべてのバランスだと言っていた。天気との兼ね合い、茶葉の性質、ひとつひとつの工程、名人であるヤンヤンの父親から、ヤンヤンの夫・シャオライへと受け継がれているという。作業を終えてみんなで外に出ると、蜜蜂が家分けをしていた。

    お昼を食べ、お茶室から見える山に登る。
    野生の覆盆子(ラズベリー)がたくさん生えているので、デザートにいただく。お茶畑まで上がると、ヤンヤンの家が遥か下に小さく見えた。夏の時期はヘビが出るというので、あまり奥へは入らず、お茶の木と景色を楽しむことにした。近くに生えるお茶の葉をかじると、新鮮なお茶の香りがした。

    山を降りると、シャオライがお茶を選り分けていた。「挑选(Tiāoxuǎn)」と呼ばれるこの工程が終わったらもう一度発酵させ、お茶が完成するという。作業が終わるのを待つ間、二階でふたたびお茶をいただく。シャオユーもやって来て、ヤンヤンと仲直り。

    市内に出るため、みんなで車に乗り込む。
    武夷山に着いた時は、知らない場所、知らない人たちだったのに、この3日間で離れがたい気持ちになっていた。連れて来てくれたパンホァンに感謝、見知らぬ日本人にとても良くしてくれたヤンヤンと家族にも感謝。1時間半ほどかけて、市内の観光地区へ。ヤンヤンとイン姐さんがお茶のパッケージを見ている間、付近を散策する。18時過ぎなのに、あたりはとても明るい。

    ホテルが建ち並ぶ通りにあるレストランに入り、イン姐さんの希望で外のテーブルにつく。ヤンヤンが頼んでくれたパッションフルーツのジュースと、米苋(Mǐ xiàn)を炒めたのがとても美味しかった。

    夜ご飯の後、今晩泊まるゲストハウスをみんなで観に行く。パンホァンが予約してくれたこのゲストハウスは、観光地区から少し離れた別荘地にあり、リゾート感あふれる、とても素敵な建物だった。桐木村の暮らしも味わい深いけど、ここ、すごく快適だよねと言い合って、さっそくゴロゴロする。武夷山最後の夜、快適という名のサプライズを用意してくれていたパンホァンに、改めて尊敬の念を抱いた。

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    宮城県生まれ。 国際基督教大学教養学部卒業。2004年より上海戯劇学院に留学。 その後、上海にて映像制作の仕事に関わる。現在は東京で、コーディネーターときどきウェブ、イベント制作を担当しています。

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