豆々しい季節

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    5月に入り、急に暖かくなり、汗ばむ日も。今年は特に夏日もあって、夏野菜も店頭に並ぶようになりました。トマトやナス、苦瓜など派手めの夏野菜に占領されながらも、5月といえば、豆です、豆!

    豆たちも地味ですが、さやごとちゃんと緑色を主張しています。特に、中国では清明節前のソラマメ(蚕豆)はみずみずしいと言われ、豆も皮ごと食べられるくらい。私はさやごと蒸し焼きにして食べるのが清明節前の毎年のごちそう。その清明節が終わると、春の野菜たちの成熟度が増していきます。

    「谷雨」(日本語では「穀雨」)の時期から次第にソラマメの皮もたくましくなるので、この時期から私は皮をむいて炒めものに。豆の皮をむいたものも売られていますが、鞘つきで買いましょう。鮮度が違います。ソラマメは甘い味がするので、少ししょっぱめの塩いためがおつまみに最高。

    (写真:東北扁豆)

    ソラマメと同じ時期、グリンピース(青豆)が丸々とした豆をつけ、上海人は鞘つきで袋いっぱい1斤(約500g)の大量買い。グリンピースとエビを炒めた「青豆炒虾仁(Qīngdòu chǎo xiārén)」が大好き。同時に、日本ではあまり見かけない芸豆やフジ豆(扁豆、油豆)も鞘ごとおいしそうに並びます。春節ごろから棚に並んでいる赤紫色でくびれがある艶めかしいお姿の東北フジマメ(東北扁豆)は店頭から姿を消します。色つながりでは、5月の中旬くらいから店頭に並ぶ紫フジマメ(紫扁豆)が秋まで十分に夏バテを防いでくれます。東北フジマメや紫フジマメは火を通すと緑色に変色し、調理するたび惜しい気がします。火加減が決め手の中華料理。一流のコックさんなら鞘を変色させず中に火を通すことができるのかもしれません。もちろん紫フジマメは、緑色の品種もあります。

    (写真:芸豆、扁豆)

    おなじみのインゲンマメ(刀豆、四季豆)もこちらでは産毛をつけたまま細くてシャキシャキ。エンドウマメも負けてません。中国語では「荷蘭豆(Hélándòu:オランダ豆)」と言って、皆が大好きな炒めものになります。あと、バンサンスー(拌三絲)のきゅうりの代わりに細切りさやえんどうを入れると水っぽくならなくて、前菜によし。

    谷雨の気温の差と雨のおかげで、5月のGWを過ぎたあたりから、ササゲ(長豆)がぐーんと成長して50cm前後に。上海人はベーコンなどと一緒に炒めますが、南方ではすっぱく漬け込んだ「酸豆角(Suān dòujiǎo)」が絶品です。夏の節気に入る「小満」まで、豆たちが食卓で大活躍。上海人は毎日、何かしら豆を食べているほどです。もちろん、豆乳、豆腐、もやしもありますね。

    豆というと、インゲンやエンドウのほかは豆だけを食べるイメージですが、中国の豆たちは大体さやごと炒めて食べるのが多い気がします。もちろん豆自体をそのまま乾燥させた乾物も種類が豊富。どの家庭も年中、豆類を買っています。うちにストックしてある乾燥豆を出してみたところ、ピーナッツ(花生)、大豆(黄豆)、黒豆、そして缶詰でひよこ豆(Yīngzuǐ dòu:鷹嘴豆)、きんとき豆(Hóng yāo dòu:紅腰豆)の5種類でした。これから暑い夏になると体にこもった熱をやわらげてくれる緑豆もほしくなります。乾燥豆は一年中ありますが、さやごと食べる豆といえば今が一番おいしい。小満がすぎ急に気温があがると、エダマメ(毛豆)の季節。日本と比べるとサイズがそろってなくて、鞘に豆が入っていないものもありますが、それも愛嬌。「安い・うまい・さめてもいい」でベビーローテーションです。

    豆はタンパク質やミネラルが豊富だから、食欲がないというときでも栄養がとれて便利。ちょっと食べるとお腹が膨れてダイエットにもいい。気候がよく、外に出たくてうずうずするこの時期、豆を食べてもっとまめまめしく活動するのもいいかもしれません。

    *()は中国語の呼び名です。広い中国では、豆の呼び方がそれぞれ異なります。今回はできるだけ上海人が日常つかっている豆の呼び方を記載してみました。

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    上海在住10数年目、翻訳業。 おいしい酒とつまみ、いい音楽に出会うことがシアワセ。 東南アジアの生鮮市場を歩き回り、上海でも市場通いを日課とする。

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