2月11日の元宵節(春節から数えて15日目)の一家団欒の日を過ぎると、中国のお正月期間が本当に終わったなあと感じます。
今年の春節期間に公開された贺岁片(お正月映画)は、家族で楽しめるコメディー映画を中心に全部で11本。2017年1月の中国映画の興行収入は49億元と、前年比27.5%増。過去最高を記録しました。
中でも興行的に大ヒットとなった5本は・・・
周星馳(チャウ・シンチー)がプロデュース、徐克(ツイ・ハーク)が監督の『西遊2伏妖篇』がトップで11.6億元、続いてジャッキー・チェン主演の『功夫瑜伽』(カンフーヨガ)が8.8億元、コメディー俳優・王宝強の初監督作品、インドで大暴れ『大闹天竺』が5.8億元、人気作家・韓寒の監督作品第二弾、90年代の懐かし青春コメディ『乗風破浪』が4.2億元、中国の人気国産アニメシリーズ『熊出没・奇幻空間』3億元。
このうち春節期間に見たのは、『西遊2伏妖篇』と『乗風破浪』の2本です。
『乗風破浪』
1982年生まれの若手人気作家・韓寒の監督作品第二弾。監督処女作の『后会无期』(2014年)も心の機微を描く良質なロードムービーでしたが、今回はタイムスリップものです。
父親に反対されながらもカーレーサーとして成功した主人公は、ある車の事故から90年代にタイムスリップしてしまいます。そこで若き日の父親と出会い、ぶつかりあいながらも友情を育み、さらには主人公が生まれてすぐに亡くなっていた母親に初めて会い、これまで言えなかった気持ちを告白する・・・。
90年代の香港映画の影響を受けて、肩で風を切るようにツッパる若者たち。BP機、ビデオテープ、OICQ、カラオケなど、なつかしい仕掛けが満載です。その中で、日本料理のシーンで登場人物の男性が日本語の歌を覚えたと言って彼女を落とすために歌い出すのが、山本耀司の『心のそばの胃あたり』(2004年作品)。初めて聞いた歌で、ちょっとびっくり。
さらに、最後に父と母の結婚披露宴で歌われるのは、さだまさしの『亭主関白/亭主失脚』の中国語版です。これがエンディングのバカ真っ直ぐで、ヒリヒリとする痛みを伴う青春時代の終焉へとつながってゆきます。
時代を象徴するようなアイテムを上手く生かしながら、若手俳優たちが生き生きと演じ、ささいなやり取りの中に真実を感じさせるような積み重ねに、監督としての実力とセンスを感じました。
韓寒と同年生まれの上海人の同僚は、「大人物の小さな生活の機微を描くのがうまい監督」との感想。学生時代の作文コンクールでも非凡な発想がすでに注目されていた韓寒。同年代の中でも突出した才能の持ち主として早くから不動の地位を確立してきているようです。さらにはカーレーサーとしても活躍していて、劇中のカースタントの多くは監督自らが行っていたようです。多彩ですな。
『西遊2伏妖篇』
この春節一番の興行ヒット作品で、期待値も高かったこの作品。2013年の『西遊・降魔篇』の続編ですが、キャストは前回から一新。(段姑娘役の舒淇だけは引き続きゲスト出演。)
今回は三蔵法師が呉亦凡、孫悟空が林更新と若手イケメン対決。
呉亦凡は去年の中国ヒット映画の3本に1本は彼が出ていたような印象のある売れっ子で、今年もまだまだ彼の時代が続きそうです。
ですがこの作品、3D映像はすごかったけれど、内容的にはかなり残念な展開でした。
孫悟空がシンゴジラみたいになって三蔵法師を食らったかと思えば、最後に実は・・・というようなドンデンで。ラストの大スペクタクルは3Dならではの見ごたえはありましたが。西遊3があるなら、次回に期待・・・というところでしょうか。
この映画で耳に残ったのが、「扑街」(広東語の発音のまま“ポッカーイ”と)の応酬。バカ、アホ的なニュアンスで使われていましたが、大陸映画では普通は出てこないセリフなので、なかなか新鮮でした。
*予告動画は こちら
『健忘村』
見たかったのに、早々に公開が終わってしまったこの作品。
台湾人監督で、台湾の屏東県で撮影された作品でしたが、監督の台湾独立メッセージなどが中国メディアで問題になったことも、公開の早々の打ち切りの背景にはあるようです。一方、同じ時期に公開された台湾では、大陸色が濃いとこちらもヒットしなかったようで。
台中合作も難しいですね。
ちなみに監督さんは、1962年台北生まれ、デビュー作は1995年『熱帯魚』です。
予告編が面白そうだったので、DVDになったら見てみたいと思います。
*予告動画は こちら