中国では、クリスマスから元旦休みにかけて、春節前のお正月映画第一弾のピークが来ます。
今年は不作だと言われましたが、その中でも張芸謀(チャン・イーモー)監督の超大作『長城』は興行収入11億元を超えるヒットを記録中で、1ヶ月公開が延長されてこのまま12億元まで伸びそうな勢いです。
次々と新作が公開されるので、この時期おっかけるだけで大変ですが、私が最近見たのはこの4本。
『羅曼蒂克消亡』(The Wasted Times)
主演作品にはずれなしといわれる葛優、色気もたっぷりに演技派に成長した章子怡(チャン・ツーイー)、そして上海語を操る日本軍人スパイ役で存在感を示した浅野忠信と豪華な布陣。
舞台は1930年代の上海。
葛優が演じるのは上海を裏で取り仕切るギャングのボス(モデルは杜月笙)、浅野忠信はボスの妹と結婚して子供もいて、上海人になりきっている日本人・渡部役(でも実は、日本軍人のスパイで、のちにボスを裏切る)。多くの血が流れ、恩讐の彼方に、1949年ボスは一人香港へと旅立ちます。
時代背景もあり、かなり冷酷で残虐な描写もありますが、全編にブラックユーモアのきいたシーンが織り込まれていて、葛優の抑えた演技が冴えています。
浅野忠信のあの時代を生きた人間の正気と狂気の起伏が圧巻でした。上海語は吹き替えでしたが、それも自然に見える表情や立ち居振る舞いは、さすが。黒猫との穏やかな日常の一コマが、厳しい時代のなかで胸にしみました。
あとで、出演キャストを見て気がついたのは、浅野さんの上海人の奥さん役を演じたのが日本人の女優さんだったこと!中国人の女優さんが演じていると思って見てました。
松峰莉璃さん:中央戯劇学院を卒業して北京で活動している監督・女優さんなんですね。
(松峰莉璃さんの微博:http://weibo.com/lilie815)
上海語で語りが進行し、時間軸も複雑に入り組む構造で、じっくりもう一度見たい作品です。
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『長城』(The Great Wall)
「万里の長城に襲ってくるエイリアンVS 禁軍+外国人助っ人」という、なんともアメリカ人企画っぽい映画。(プロデューサーは、アメリカ人の名前が並び、映画も全編英語メイン!)
とにかく衣装も音楽も派手だし、スケールも大きいのだけれど、襲ってくる「饕餮」(「山海経」に出てくる怪獣)がどう見てもアメリカ映画で見たことあるようなエイリアンだし、おまけに莫大な数のエイリアンが襲ってきてるのに、ボスの一匹を倒したらそれでハッピーエンドなんて・・・。
マッド・デイモンの役どころも、ブラックパウダー(火薬)を探しに命がけで中国に入ってきて捕まって、で、中国を助けて英雄になって国に帰る?ってなんだかなあと。恋愛要素も淡すぎて・・・。
天燈や太鼓を使った戦闘シーンの煽りは叙情的で、カラフルな衣装も美しいけれど、見どころはそれくらい?でも興行収入はすでに11億元突破です。日本で公開されることはなさそうな・・・。
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『摆渡人』(See You Tomorrow)
トニー・レオンと金城武は共同でバーを経営するパートナーで、実際は街の“金牌摆渡人”(凄腕の人助け屋)。彼ら二人を取り巻く面々の、人生の悲喜こもごも・・・。
キャストも、画面の雰囲気も、音楽も、とにかく90年代のあの香港映画の懐かしさが満載で、変わらない体を張った香港的笑いのシーンだったり、ほっこりくる人間模様のエピソードの積み重ねだったり、あっという間の140分でした。
『長城』にも出ていた若手イケメン俳優・鹿晗がこっちにも。韓国でEXOとしてのアイドル活動を経験し、ブログのコメント数でギネス記録も持っていて、人気も話題性も抜群。
個人的には、『メイト・イン・ホンコン』でデビューしたサム・リーが出てきて、こっちのほうが気になったり。でも一番は、やっぱり金城武は何をやってもカッコイイ!と^^
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あとは筷子兄弟の肖央主演で気になって見に行った・・・
『情聖』
美人の奥さんも子供もいる普通のサラリーマンが、駐車場で見かけた韓国人のスーパーモデルに一目惚れ。学生時代の親友たちの手を借りて、奥さんの目をごまかしつつなんとかその恋を成就させようとするが、鬼のような女ボスに求愛したと誤解されて追い回されたり・・・と、コメディなんだけど、全てが男性目線でうーん。。
この映画の興行収入も3.66億元!だそうです。規模が違いますね。
もうしばらくすると、今度は春節映画の大作がまた次々と公開になるようです。