二人の幼なじみから想いを寄せられる小学校教師・タオ。山西省汾陽(フェンヤン)を舞台に描かれる三角関係から物語は始まる。やがて、タオはそのうちの一人と結婚し、息子を授かるが・・・
あらすじを伝えるのが難しいという評判のこの映画、監督の出身地である山西省の地方都市・汾陽に生きる女性と彼女を取り巻く人々を、時間・場所ともに壮大なスケールで描いている。中国の社会的な背景や移住感覚にはとてもついていけないが、「時間の流れ」と「故郷」について考えてみると、どんな人にも身近なテーマであるだろう。
この映画のなかで、揺れ動きまくる人の感情、心休まる間もなく過ぎゆく時間の流れと対照的なのが、「故郷」という存在の安定感だ。去る人あり、戻ってくる人あり、そこが自分の故郷だと実感できない人もいる。そのすべての人を、故郷という場所も、そこに残った人々も、みなゆるりと受け入れるのである。映画の舞台となった汾陽(フェンヤン)という土地がそうさせている部分もあるのだろう。自然の中の景色、街の風景などが、静かではあるけれど、確かな、変わらないものの象徴として存在しているように感じられた。
それは同時に、過ぎ去ってしまった時間の流れや、自分が何者であるかという不安や憧れを浮き彫りにさせる。私たちは、故郷という確かなものの存在を確認せずには、やはり前には進めないのだろうか。
変わらないもの、変えられないものとどうやって向き合うか。
そうやって、この映画を観ている者は、いつの間にか壮大な自分探しの旅へと誘われるのだろう。
(山河故人/Mountains May Depart)
監督:賈樟柯(ジャ・ジャンクー)|2015年|中国・日本・フランス|125分
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「女子目線でひとこと。」
まず語るられるべきトピックとして、どちらの男を選ぶのか問題がある。後になって考えると、あのときすべてが決まったとかいう分岐点。その超重要な選択を経て、果たして幸せになれるのか。どちらの答えが正しかったのか、それは価値観によるところが大きいとはいえ、どんなに悲しいことやつらいことがあっても、女子は女子らしさを忘れず、また楽しく生き抜く術を持っている生き物であることを深く考えさせられる映画であった。