開高健のエッセイに「一時間幸せになりたかったら、酒を飲みなさい」とある。
元々は中国の古い諺らしい。
私は、幸せな酒のお供に肴を作ることが何よりも楽しい。
私がよく行く市場は「田子坊」の横の泰康路菜市場。
野菜、魚、肉から乾物、調味料まで何でも揃う便利な市場なのだが、臭くて不衛生と嫌う人も多い。しかし、丁寧に調理すれば、ほぼ問題はないし、安くて新鮮。どの野菜もたちもつまみに最高!とばかり自己主張している。私は、個性のない年中同じ野菜で埋め尽くされた日本の野菜売り場よりも、季節感のある泥付き野菜が並ぶ上海の市場に何倍も魅力を感じている。
市場に欠かせないのは、おつりをごまかすお姉さん、愛想はいいが高く売りつけるおじさん。
そして、トランプに夢中で商売っけのない髭おじさんは、タバコ臭い手で葱をおまけまでしてくれる。
こんな人間臭さも魅かれる原因だ。
作るものは様々。せっかく中国にいるのだから、基本的に中華を作る。
勿論、和食や東南アジア料理等の各国の料理を作って、その国を想うのもいい。
私は、料理とお酒があればおしゃべりになる癖がある。酔って遅くなっても家に帰る必要もなく、安心して楽しめるから家ごはんは都合がいい。また、料理を盛る器も結構気に入っている。大抵は、市場横の「雑貨店」や行商の食器屋から買い求めたもので、キッチュな食器やグラスを見つけると嬉しさを抑えきれず、値段交渉を冷静にできなくなるのが悩みの種である。
自炊生活は、忙しい上海で自分らしさを取り戻すことだと思う。
そして、より上海を楽しむことは、自炊を楽しむことなのだ。
田子坊に行く前に、ちらっと隣の市場に行ってみてください。
きっと自炊したくなりますよ!