中国では、美人で賢くなければ悪女になれない。
魅力ある女性にはお金と権力が集まり、よりいっそう輝くことになる。
本書では、英国人実業家殺害事件で有名になった谷開来、温家宝の妻・張培莉、魔性の熟女・李薇、元祖悪女・江青など、中国の現代史に残る悪名高きギラギラ系美女たちの栄光と破滅が描かれている。
彼女たちの置かれた社会的環境や事情はともかく、生きる力の強さに圧倒された。
注目すべきはそのシンプルさ。そのとき自分にとって一番必要なものが何かを判断し、躊躇なく目標に向かってゆける瞬発力と一途さ。日本でしばしば「悪女」とされる、ニコニコ笑ってオイシイところをかっさらうしたたかな女、にはない潔さを感じてしまう。
その美貌と賢さで権力を手に入れても、野心はとどまることを知らない。邪魔者は叩き潰し、利用価値があればどんな相手だって誘惑する。価値観も、倫理観も、彼女たちの前ではまったく意味をなさない。こんなに強くて腹黒い女性が周りにいたら迷惑この上ないが、そうせずには生きられなかった彼女たちを嫌いになりきれない自分も確かにいる。
覚悟がなければ悪女になれない。自分が自分であるために、確固たるポジションにのし上がるために、彼女たちは自分磨きをおこたらない。努力し続ける忍耐力と、自分に賭ける覚悟をもって道を切り開いてゆく姿に、悪女たちの美学を垣間見た気がした。