日本在住の中国人たちが、裸一貫で来日してから今日に至るまでの日々を、ダイジェストして収めた本著。
経営者、医師、芸術家、ジャーナリスト、不法滞在の料理人と、多様で波乱万丈な人生が次々と語られていく。彼らは異国の地・日本で、どんな壁に遭遇し、どう乗り越えてきたのか。
その姿は、私たち日本人の中の中国人像を変えるだけでなく、自らの生き方を見直すきっかけをも与えてくれる。
私がこの本を手に取ったのは、トップバッターとして掲載されている、中国語チャンネルの会社社長・張麗玲さんの名前を見つけたからだ。張さんは、中国で女優として活躍した後、22歳で来日。大学を卒業後、商社に就職し、29歳のときに、日本在住の中国人留学生を撮影したドキュメンタリー制作を行った。完成した作品は日中両国人の心をつかむ大ヒットとなった。
まだ高校生だった私も、このドキュメンタリーを見たときのことを、今でもはっきりと覚えている。
遠い隣国だった中国が、ぐんと近く、愛おしく、美しく感じる、そんな作品だった。その影響もあり大学生になった私は、中国へ留学した。
本著には、張さんのドキュメンタリー制作後の人生も書かれており、興味深く拝見した。
今は映像制作者ではなく、経営者として奮闘する張さん。役割は変わっても、日中の相互理解のために、必要だと思うことに全力で取り組む、と力強い言葉で締めくくられていた。
どこの国で生きるのか。それはほんのちょっとした偶然の積み重ね。
しかし、その国のことを好きになるように生き抜くには、強い意志が必要だ。
諦めずに挑戦し続けた在日中国人の生き様は、そう教えてくれる。